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ひとりでも割と平気で生きている

一人で出来る事を追求しています。映画や小説など新しい何かに触れて新鮮さを大事にしてます。アマゾンアソシエイト参加してます。

童貞の恋愛。美しい彼女。ノンフィクション日記。

好きな人が初めてできた。

清楚で気高く気品のある風貌で動作の一つ一つが美しい。

高瀬の花ってやつなのだろうか。

図書館で一人学生服姿で勉強に取り掛かる姿はとてもその場に似つかわしくないくらいに様になっていた。

この人にはどんな相手ができるのだろうか。

そんな手の届かない幻を見ているようで、逆に異性としての意識はしていなかった。

ただひたすらに自分のやることさえ出来ていればそれでよいのだ。

僕も勉強に取り掛かる。

彼女の挙動が変わった気がするが自分はこんな時に何を考えているのだろうか。

目の前には数学の参考書を広げて、頭の中を数字で埋め尽くそうとしているさなか、視界の端に視線が確かに向けられていることに気づいた。

その一瞬自分の存在を忘れて頭が空になってしまった。

もう何も見えないしなぜだか見たくなかった。

そうして時間が過ぎると彼女の方は席を立ち、背後を通過した瞬間に心臓が抉られるような感触があった。

馬鹿にされているのだろうか?

うぶな事が伝わって嫌われたりしていないだろうか。

目の前の参考書だけでなく、視界に移る全てが虚像となって時間の法則を無視した頭の空間の中で彼女の事しか頭に入っていなかった。

彼女の存在を排除しようとする理性のストッパーの存在などとうに忘れ去っていた。

体が暑苦しくて、特に顔が紅潮しているのが自分でも分かるくらいだった。

「現実を見ろ」

心の中で誰かが囁いた。

いつもと同じように図書館へと足を運ぶ毎日。

その場所には彼女がいて、次第に距離を詰めてくるようになった。

隣に座られたときには頭がショートしてうつ伏せてしまった。

こんなことが現実に合ってよいのだろうか?

過去に一度だって自ら自分を受け入れてくれた人がいたか?

いたかもしれないが、その存在に気づけなかった。

「遊ばれているのかもしれない」

現実を受け入れられない自分は逃げに入った。

潤んだ瞳を向けて真剣にこちらを見る彼女を振り切って僕は存在を無視しようと決めた。

親にだって受け入れられたことがないんだ。

自分のどこがいいのか自分でもよくわからないのに相手がそれを見出す事なんて出来るのか?

そして数か月が経過したころに彼女は隣にゴリラとでもあだ名をつけたくなるような野生のにおいを発した野獣を連れていた。

「そうだったのか」

彼女はモンスターハンターなのだ。

僕もきっとそのコレクションの一つなのか。

絶望した。

もう何も見たくないし、自分の存在を消し去りたかった。

死ぬなら今だ。

死ねるわけないけど。

なかったことにして見向きもしなかった頑固なプライドがへし折れた。

俺には何も残っていない。

これから先に希望を感じることがあるだろうか?

彼女に出会えたことだけで運を使い果たしてしまった気分だった。

それから数年間俺は狂気に満ち溢れていた。

次の日に彼女はこちらの様子をみて泣いていた。

人前で泣くかふつう?

人の視界に入らない地味な場所にいたので誰にも見られていないのでただひたすらに彼女を軽蔑して見下す自分に恥ずかしさなど感じなかった。

なんで泣いているのか知らないが、俺以上に絶望を味わってくれるなら地獄に落ちてくれ。

その次の日はまた野獣を連れて堂々と入口正面に並んで座っていた。

「好きにしてくれ」

もう何でもよかった。

俺はプライドなんてもう捨てる。

しかし、最初に病んだのは俺の方。

人を呪えば穴二つっていうしな。

しかもこんな公共の場所に散らばる面々の前で葛藤が繰り広げられてたらそのうちの何人か事情を察するだろう。

呪うときは人に姿を見られてはならないのにそこで大きな過ちを犯したせいで真っ先に呪いは自分に降りかかってきたのだ。

無気力に襲われながら怠惰にならないように自分の足を叩いてでも体を動かした。

体を動かす事だけに精いっぱいで自分が何を考えているのか分からなくなっていた。

ただ、彼女を傷つけたかった。

野獣を堂々と連れながら自分の前に潤んだ瞳をぶつけてくるのが許せなくてやっきだった。

彼女を傷つけるために一番の方法は幻滅させることだと最低の男になりきっているつもりが本当に最低な顔面を構成するまでになっていた。

他人からとがめられるようにもなり、その他人に対しても抵抗を続けて一年が経ったころ。

久しぶりに図書館へ向かうと彼女は茶髪に染め上げ、服装は地味で身にまとう雰囲気も軽くなっていた。

以前の様に美しい彼女はいなかった。

せいぜいかわいい女の子どまりの人間だ。

目の下にはクマが出来ていながらも僕を認識すると笑顔で近寄ってきた。

なんだかショックだった。

罪悪感を感じ、彼女に向かって初めて視線を合わせた。

目が合った瞬間に逸らされてしまったが、その後もなんどか目の前を行ったり来たり。

彼女への申し訳なさからコンタクトを試みたが、それよりも自分の行いに嫌気がさしてそのまま置いて帰った。

何日か後にまた図書館を訪れた際にはまた違う男を連れていた。

野獣とは違って細身ではあるものの彼女と並んでいるのを見ると軽そうな雰囲気が感じられた。

僕を認識すると目の前でやり取りを始める。

そのパターンはいつものことだ。

彼女は以前の様に元気はなかった。

動作が鈍く、今にでも消えてしまいそうだった。

僕としては申し訳なさと後悔しかなかった。

男が僕の存在に気づき、もちろんの事彼女にその存在について尋ねた。

「ちんぴら」

弱弱しい声でそう呟くと僕は様子を少し見てから立ち退いた。

その数日後に足を運んだ時に見た彼女は髪を黒く染めなおして口にはマスクをしていた。

周囲を見渡して何かを探している様子だったが先に見つけたのは僕だった。

目の前をやつれた病人のような顔をして通り過ぎて行った。

 

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